お手入れ手帖 Vol.15 2026年 秋色

美容医療専門医
貴子先生に伺いました。
ヒアルロン酸の本当の実力。

Vol.15 2026年 秋色
美容医療専門医 貴子先生に伺いました。ヒアルロン酸の本当の実力。

化粧水や美容液などで、よく目にする「ヒアルロン酸」。肌にうるおいを与えてくれる成分というイメージはあるけれど、そもそもどんな成分で、私たちの体でどんな役割を果たしているのでしょうか。美容医療専門医の貴子先生に、改めてヒアルロン酸の働きや魅力について教えてもらいました。

体内のヒアルロン酸の約50%は
肌に存在しています

「ヒアルロン酸は肌を保湿するための美容成分だと思われがちですが、もともと私たちの体の中に存在しているムコ多糖類の一種です」。こう話す貴子先生。ヒアルロン酸は肌をはじめ、関節や軟骨、眼球の硝子体、結合組織、血管などに存在しています。

保水/関節のクッション/肌のハリ

「なかでも多く存在するのが肌で、体内のヒアルロン酸の約50%が肌に存在しています。ヒアルロン酸には水分を抱え込む性質があり、ヒアルロン酸1gに対して約6リットルもの水を抱え込むことができます。この機能により、肌ではみずみずしさや柔軟性を保つことに関わっているほか、関節では、骨と骨の間でクッションや潤滑剤のような役割を果たしています」

ヒアルロン酸1gで、
6リットルもの保水力

ヒアルロン酸1gで、6リットルもの保水力

なめらかに体を動かしたり、肌の柔らかさを保ったりするために欠かせないヒアルロン酸。その大きな特徴が、水との親和性の高さです。「ヒアルロン酸は多くの親水基をもっているため、水を豊富に含んだゲル状になります。水を抱えることで組織にボリュームや柔らかさが生まれ、それが肌のみずみずしさやしなやかさ、ハリにつながっています」。ヒアルロン酸は、いわば体の中で水をたっぷりと抱えて存在する“柔らかなクッション”。肌の美しさを考えるうえでも、なくてはならない存在なのです。

年齢とともに減るだけじゃない。
ヒアルロン酸は「質」も変化する

誰もが生まれながらもっているヒアルロン酸ですが、残念ながらずっと同じ状態で保たれるわけではありません。「体内のヒアルロン酸は年齢とともに減少し、60代になると20代の約半分になるともいわれています。そして、問題は量だけではありません。年齢とともにヒアルロン酸の状態も劣化して、だんだん水を抱え込む力が弱くなっていくのです。高齢者が膝の痛みを訴えるのも、膝関節のヒアルロン酸の減少と劣化の影響が見られます」

皮膚のヒアルロン酸量

皮膚のヒアルロン酸量

ヒアルロン酸自体が減るだけでなく、若い頃と同じようにたっぷりと水を抱え込めるとは限らないということ。その結果、若い頃はみずみずしく柔軟性があった肌も、加齢によって硬く、薄く、しなやかさを失いやすくなるといいます。
ヒアルロン酸の量や質は、年齢以外にどのような要因が関わるのでしょうか。「大きく影響するのが紫外線です。例えば同じ人の肌でも、日常的に紫外線を浴びている“顔”と、ほとんど日に当たらない“お尻”では、肌の状態はかなり違いますよね。これは紫外線によってヒアルロン酸もダメージを受けることが影響しています。また女性の場合、年齢とともにエストロゲンが減少することによりヒアルロン酸も減少します。そのほか、慢性的な炎症や酸化ストレス、喫煙なども影響し、これ以外に遺伝的要因なども考えられます」。ヒアルロン酸を守るためには、日々の紫外線対策や健やかな生活が欠かせないようです。

コラーゲンが「骨組み」なら
ヒアルロン酸は
「水を抱えたクッション」

ところで、肌のハリや弾力といえば「コラーゲン」もよく耳にします。ヒアルロン酸とはどう違うのでしょうか。「例えるなら、コラーゲンは肌を支えるネットや骨組みのような存在。一方ヒアルロン酸は、その間で水を抱え込む柔らかなクッションのような存在です。コラーゲンは線維状の構造をもち、肌の強度やハリを保つことに関わりますが、ヒアルロン酸は、たっぷりの水分を抱え込み、みずみずしさや柔らかさ、ふっくらとした状態を支えます。それぞれ役割が違うアプローチで、肌を健やかに美しく保つために役立っています」。ヒアルロン酸とコラーゲン、お互いが支え合って美しい肌を構成していることがわかります。

コラーゲンが「骨組み」ならヒアルロン酸は「水を抱えたクッション」

美容医療では「形をつくる」から
「肌そのものを育てる」使い方へ

このような働きをもつヒアルロン酸は、美容医療の世界でも活用されています。「昔からよく知られているのは、注入して肌の凹みを補ったり、輪郭を整えたりする方法です。ヒアルロン酸は柔らかなゲル状で、さまざまなパーツに使いやすいこと、またもともと体内に存在する成分で生体適合性が高いため、美容医療で長く活用されてきました」。けれどこの使い方に近年変化が現れているとのこと。
「最近注目されている“肌育注射”などの施術では、ヒアルロン酸で形やボリュームをつくるのではなく、肌内部の水分環境を整えたり、肌そのものの美しさを高めたりするといった、土台となる肌状態を整えるスキンケアに近い発想で使われるようになってきています」。貴子先生自身も、形を変えるより肌そのものを美しく育てていく使い方のほうが好き、とのこと。新成分が次々と登場する美容医療の世界でも、ヒアルロン酸は、その使い方を進化させながら重宝されているのです。

美容医療では「形をつくる」から「肌そのものを育てる」使い方へ

ヒアルロン酸は美容成分の
「定食の白ごはん」!?

「ヒアルロン酸って、定食でいえば“ごはん”みたいなものなんですよ(笑)」。お話を伺ううちに貴子先生から飛び出した、わかりやすい表現。「美容医療でもスキンケアでも、新しい成分が登場すると、“よりよい成分なのではないか”とそちらに注目が集まりがちです。でも肌育の製剤などを見ても、ベースにはヒアルロン酸やアミノ酸が入っていることが多いもの。私たち医師にとっては、“入っていて当然”というくらい基本的で、逆に言えばなくてはならない存在なんです」。白ごはんは和定食にあたりまえのように並びますが、お米の種類や炊き方によって、おいしさも食感も変わります。組み合わせる料理によってどんなお米を選び、どんなふうに炊くかなどにこだわることで、主役を引き立てることも、自ら主役になることもできるのです。ヒアルロン酸もこのような存在だと貴子先生は言います。
「化粧品も、配合されている成分名や、その濃度や量に注目するばかりでなく、どんな成分とどう組み合わせ、どんなふうに肌に届けて働かせているのかに注目すると、その製品の働きがよくわかると思います」。特にヒアルロン酸のように長年使われてきた定番成分だからこそ、どんな使われ方をしているのか、がポイントだと貴子先生。

ヒアルロン酸は美容成分の「定食の白ごはん」!?

デリケートな目もとや敏感肌にも
ヒアルロン酸という選択肢

もともと肌に存在しているヒアルロン酸は、敏感に傾きやすい肌を考えるうえでも魅力的だと貴子先生。「敏感肌の方は乾燥していることが多いですし、目もとはもともと皮ふが薄く、乾燥などによる変化も感じやすい場所。ヒアルロン酸は、そうしたデリケートな部分にも取り入れやすい成分だと思います」。実際、クリニックでも肌が敏感に傾いているときは、希望されている施術を避け、ケアを優先することがあるそうです。こうしたときにヒアルロン酸が活躍します。「肌状態が悪いときにレーザーなどの強い施術をすると、赤みが長引くなど予想外の反応が起こる可能性もあります。そんなときはまず肌表面の状態を整えることを優先します。きちんと“守る”ことが、次の積極的なケアにつながる。特に敏感肌では、守りのケアこそ攻めのケア、ともいえると思います」

きちんと守る→積極的なケアへ

また目もとに悩みを抱えていても、「新しいものを加えて肌が荒れたら」と心配し、専用アイテムをためらう敏感肌の人は少なくありません。そんな方こそ、肌と親和性の高いヒアルロン酸などの成分を味方につけ、守りながらケアすることが大切なのでしょう。

目元の写真

増やすよりまず、
「ヒアルロン酸をつくれる肌環境」を

では、ヒアルロン酸をできるだけ減らさないために、私たち自身にできることは?「ヒアルロン酸は糖鎖なので、コラーゲンのように“タンパク質を摂れば増える”、というようなものではありません。それよりも大切なのは、ヒアルロン酸をきちんとつくれる肌環境を整えておくこと。そのためには、冒頭にお話ししたような日々の暮らし方が鍵になります。特に30代後半以降はすでにあるヒアルロン酸をどれだけ守れるかにかかってきます」

食生活では、極端な食事制限を避け、バランスよく食べることが大切だそう。「バランスのよい食事によって、線維芽細胞を含む皮ふの代謝を健やかに保つことを心がけてください」

紫外線を防ぎ、乾燥させず、きちんと食べて眠る。一見地味に思える毎日の積み重ねこそが、みずみずしく柔らかな肌を保つ基本。美容界の「定食の白ごはん」であるヒアルロン酸だからこそ、私たちも毎日の暮らしの中で、長く上手につき合っていきたいものです。

松倉クリニック代官山院長 貴子先生

松倉クリニック代官山院長貴子先生

形成外科医・美容皮膚科専門医。豊富な美容知識と確かな技術をもち、メディアでも多くの女性たちに向けてその知見を発信。また華やかな風貌とのギャップを感じさせる気さくな人柄と的確な語り口に美容界のファンも多く、自身が監修した医療用サプリメント「TAKAKO STYLE」も人気。

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