教えてくれたのは…
関東裕美 先生
東邦大学 医療センター
大森病院皮膚科
臨床教授
平河聡 研究員
ポーラ化成工業株式会社
フロンティア研究所所長/医学博士
バリア機能が変化することで起こります。
(関東先生)
特別な疾患を除いて、「肌荒れ」は内的・外的な変化に伴って種々の原因により肌が本来持つバリア機能が変化することで起こります。肌のバリア機能が低下すると、外部刺激が侵入しやすい状態になり、肌の水分量も減少するため、肌荒れが起こりやすくなります。
外部環境の影響:季節の変わり目の気温の変化、空気の乾燥、紫外線や花粉などの外部刺激
心身の変化:ストレス、アレルギー体質、ホルモンバランスの不調、免疫力の低下
生活習慣の乱れ:睡眠不足、不規則な食生活、誤ったスキンケア方法
春と秋は花粉の飛散も多く(春:スギ、ヒノキ 秋:ブタクサ、ヨモギなど)、同時に湿度も気温も大きく変化します。その外気温の変化に肌が対応できず、バリア機能が低下し、普段感じない赤みやかゆみといった肌荒れが急に起きることがあります。
お手入れのポイント
洗顔は適量をしっかり泡立てて、なるべく摩擦しないようにやさしく行い、ぬるま湯で洗い流すこと。
年齢により季節の変化や温度湿度変化に適応する皮膚の防御能力が変わってきます。自身の変化を日々感じて、臨機応変に対応することが大切です。
洗顔料の使い過ぎや、熱いお湯は、肌にとって必要な皮脂まで洗い流してしまい、バリア機能がさらに低下してしまう原因になります。そして、洗顔後にはしっかりと保湿しましょう。
例えば生理前は、女性ホルモンのエストロゲンもプロゲステロンも低下するので、皮脂の分泌が高まる傾向にあり、ニキビができやすい時期です。生理中~生理後エストロゲン分泌に伴い徐々に皮膚の調子が戻ってくるのを多くの方が感じていると思います。排卵期に向けてエストロゲン分泌が高まる時期には、肌のうるおいも良くなり、バリア機能は良い傾向になります。
40代後半~50代いわゆる更年期には両者の女性ホルモン分泌が減少して心身に不快な症状を感じることが多く、全身免疫も不安定になるので積極的に健診を受けることが望まれます。人間50年生きてくればメインテナンスが必要で早期に故障を発見すれば長期間健康維持で来ると考えて下さい。
いつもより洗浄料の量を多くして皮脂分泌の多い部位は積極的に洗ってよい時期です。洗顔後の保湿剤も繰り返し吹き出物が出る部位、額や鼻の周りなどには少なめに、頬回りや目の周りなど皮膚の薄い部分を中心にケアするなど、肌のコンディションに合わせてお手入れしましょう。
肌荒れの症状や部位、サイクルを自分で注意深く観察して捉えましょう。誰もが朝目覚めて1日を過ごす日常生活そのものが、心身に負担をかけているのです。日々変動する気力・体力を見極めて、頑張りすぎない生活習慣、良い睡眠、食事、休息を見直してみることです。誰もが自由に自身の生活習慣を調整出来ればよいのですが、多くの方がそれは不可能の事とあきらめてしまうかもしれません。何が大切なのかを考え直すゆとりを持って、肌の調子に逆らわず日々過ごすことを考えましょう。季節に応じた正しい洗顔と保湿とUVカットを心がけることがアンチエイジングに繋がります。
人は睡眠中に内分泌ホルモンが生成され、そのホルモンが人間の活動を支え、健やかな肌をつくる役割も担います。食習慣の乱れも肌荒れの原因になるので、消化の良い食材を選び、なるべく沢山の食材をバランスよく摂る事です。水分も積極的に摂取し心地よい排尿排便を維持することが大切です。
下記5つの症状が挙げられます。
(平河研究員)
肌が
かさつきやすい
肌がひりひり·
ピリピリすることがある
肌が赤くなったり
痒くなることがある
肌がタオルやパフの刺激で赤くなりやすい
季節、体調の変化等で
肌が不安定になりやすい
ポーラ化成研究所では、ここに示す5つの不調に1つでも当てはまれば、敏感肌と定義しています。
一時的にでも、このような状態が現れたら「敏感な状態」です。
つまり、どんな人でも敏感な状態に陥ることがあるといえます。
いいえ、誰でも敏感状態になる可能性があります。
(平河研究員)
敏感肌って、
たとえば、小さい頃にアトピーを患っていたような、特別に肌が弱い人のこと?自分は脂性乾燥肌なので、敏感肌ではないはず?
いいえ、実はどのような肌タイプの方も、敏感状態に陥る可能性があります。
水分と油分のバランスで分類する4タイプの肌性(普通肌/乾燥肌/脂性肌/脂性乾燥肌)があります。よく敏感肌もその仲間と誤解されやすいですが、実は全然ちがうものです。
敏感状態はバリア機能が関わるため、脂性乾燥肌でも普通肌でも、バリア機能が低下すれば敏感肌になります。敏感は、どんな肌性の方でも陥る「肌状態」といえます。
どんな肌性でも敏感肌になる
バリア機能を担っている、角層の状態に注目です。
(平河研究員)
敏感な肌はバリア機能が低下した状態です。
肌のバリア機能を担っているのは 、角層です。
健やかな肌の角層は、角層細胞がしっかりと成熟し、その間が細胞間脂質といううるおいで満たされています。
一方で、敏感肌の場合は、角層細胞が未熟で面積が小さい、だから隙間があいてしまう、この隙間から細胞間脂質がにげやすくなり、さらに、外部の刺激が入りやすい。だから、ヒリヒリや赤み、かさつきといった肌不調がおこるんです。
角層の不調の要因は複数ありますが、その1つが、ターンオーバーのスピードです。理想は28日と言われています。しかし、これが早まってしまうと、成長過程の中で本来つくられるべきもの、例えば、脂質やたんぱく質などがつくられにくくなります。これらはのちのち、細胞間脂質になって、うるおいやバリア機能を果たすために必要なものです。
実際の角層細胞の写真をみてみましょう。
(平河研究員)
健やかな角層は、細胞が大きく扁平にひろがって、隣と少しずつのりしろを持ちながら、隙間なく規則的に並んでいます。
一方で、敏感肌の例では、角層細胞ひとつひとつが小さく、並び方が不規則で隙間が空いています。これではうるおいが逃げて、刺激が侵入しやすくなってしまいます。
また、ところどころに、色が濃い部分がありますが、これは、何層か重なって剥がれてしまったので、色が濃く見えています。角層は一番上の層だけが、均一に剥がれるのが理想なんです。でも、敏感肌では、一番上だけでなく何層も重なってごそっと剥がれやすいんです。
角層が綺麗に剥がれるためには酵素の働きが必要なんですが、その酵素はうるおいが少ない環境だと働かないんです。細胞間脂質が少ない敏感肌では、酵素が活性化しないから、綺麗に剥がれずごそっと剥がれてしまうんです。そもそも、未熟な角層細胞なのに、それが、何層もごそっと剥がれることにより、バリア機能が発揮できなくなりますね。
30代以降は徐々に肌が変わっていきます。
(関東先生)
年齢を重ね30代以降は徐々に皮脂を分泌する能力が弱まるので、洗浄後の皮膚回復力が皮脂分泌低下、バリア機能は20代と比べ次第に衰えてきます。
ストレス社会である現代社会では会社では中間管理職になるような30代後半~40代女性ではホルモンバランスが乱れやすく、50代以降は更年期の影響を受けるようになります。 年齢を重なるごとに心身への負荷が強くなるわけですから変化する自分の身体と肌を理解し、スキンケアは毎日同じ手入れに固執することなく臨機応変に対応できるゆとりを持つことです。
若い頃と同じケアは肌トラブルを招いてしまうこともあるでしょう。
その日の体調や肌質に合わせた洗顔と、適切な保湿ケア、UVカットを基本としながら、自分自身のコンディションに合わせたケアを心がけていくことがとても大切です。
ホルモンバランスが関係しているかもしれません。
(関東先生)
生理前はエストロゲン、プロゲステロン両者の分泌が低下することから女性でも男性ホルモンであるアンドロゲンの影響を受けて皮脂分泌が高まりニキビができやすい時期です。生理が始まって排卵期に向かいエストロゲン分泌が上昇する時期には、多くの方が肌の潤いが整いバリア機能は良化する傾向にあります。
生理周期を意識しながら、スキンケアもコントロールしていく事が、ゆらがない肌の近道です。
赤みが続くようなら放置しないで。
(関東先生)
赤みの質により対処は異なりますが、急激な日焼けによる赤みは、やけどと同じようなダメージが肌にかかってしまいますから早期対処が必要です。
赤みを長期間放置してしまうと炎症後のシミを作ってしまいますから、決してそのままにせず、あまりにもいつもと異なる場合は皮膚科専門医を受診してください。
「化粧水がしみる」のも1つのサインです。
(関東先生)
例えば「化粧水がしみる」ということも1つのサインだと理解して、我慢せずにその理由を考える事からはじめましょう。
肌が荒れた時、代わりの化粧品を頻繁に試す事は、かえって肌の負担となることがあります。
まず自分自身の生活習慣を改善する努力をして、肌の負担を減らすことです。
顔をこする行為を減らす、つまりダブル洗顔はやめてメイク落とし後はぬるま湯で洗い保湿も1種類のみにするなど・・
あれこれ迷って化粧品を増やすことはかえって肌の安静になりません。
丁寧な洗顔とスキンケアをすることで、自分の肌のバリア機能を回復させることが何よりも大切です。
赤み、かゆみ、熱感などの症状があるときは要注意
(関東先生)
赤みと水っぽいブツブツが一緒になった局面がある、熱感や腫れを伴って、他の部位まで広がっているような場合は、アレルギーや内臓疾患などが潜んでいる場合もありますので皮膚科受診をお勧めします。
化粧品皮膚炎の可能性が高いとパッチテストを行って化粧品やその含有成分のアレルギーが見付かることもあります。
ニキビのようなのに「かゆみ」を伴う場合は(「痛み」であれば、通常のニキビでしょう!)全身型金属アレルギーのこともあります。アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎、酒さと診断されているような方は化粧品かぶれと勘違いして肌を守るための化粧品をやめてしまってかえって肌状況の調整がうまくいかないこともあります。
遠慮せずに皮膚科専門医に相談してみてはいかがでしょうか。